バーチャルオフィスのように、事務所としての実体がない住所で事業を立ち上げた場合、社会保険に加入できるかどうか気になるポイントです。個人と法人、両方のケースについて、バーチャルオフィスで社会保険に加入できるのかをまとめました。
結論から述べると、バーチャルオフィスであっても社会保険に加入することは可能です。法人はもちろん個人事業主でも加入できます。
まずは社会保険について、どの程度の規模の会社に加入義務があるのか、具体的にどの保険に加入すべきかを確認しましょう。法人と個人とでは、どのような違いがあるのかを含め、社会保険の基本の話を解説します。
「社会保険」というと、健康保険と厚生年金保険の2つを指すことがほとんどです。
法人の場合は、社長を含む「1人以上」を雇用していれば加入義務が発生し、個人事業主の場合は常時「5人以上」を雇用する場合に加入が義務づけられます。オフィスの形態は無関係なので、バーチャルオフィスであっても加入が可能で、加入義務が発生する条件は変わりません。
また、健康保険と厚生年金保険はいずれも日本年金機構が管轄するもので、加入するには年金事務所で手続きが必要です。保険料は、事業主と従業員が半分ずつ負担。40歳から64歳までの従業員については、健康保険の保険料とまとめて支払う形で、「介護保険」の保険料も含めた額を負担します。
「健康保険」と「厚生年金保険」は、法人や個人事業主に雇用されている従業員が加入するもので、自営業者(個人事業主の社長)などが加入する「国民健康保険」と「国民年金保険」とは別の種類の保険です。
広い意味での社会保険には「雇用保険」も含まれています。雇用保険は、公共職業安定所(ハローワーク)の管轄。加入手続きもハローワークで行います。
法人・個人ともに、1人でも従業員を雇用しており、その人の1週間の所定労働時間が「20時間以上」で、かつ「31日以上」の雇用見込がある場合に加入義務があります。この条件はもちろんバーチャルオフィスであっても同様。義務ですので、当然加入できるわけです。
雇用保険も事業主と従業員の両方が保険料を負担しますが、半分ではなく事業主が負担する割合の方が高くなっています。
雇用保険は「失業保険」とも呼ばれ、仕事を辞めた際に給付されるもので、労働者の生活を保障し、再就職を支援する重要な役割をもつ保険です。ちなみにですが、雇用保険と次に挙げる「労災保険」の2つをあわせて「労働保険」と呼びます。
労働者災害補償保険、通称「労災保険」は、労働基準監督署や労働局が管轄しています。
個人・法人を問わず、1人でも従業員を雇用する場合に加入が義務づけられる保険です。バーチャルオフィスの会社であっても同じように加入義務が適用されます。
保険料は事業主が全額負担。通勤中や勤務中などに発生したケガなどに対する医療費を保障する大切な保険です。
バーチャルオフィスであっても問題なく社会保険に加入できますが、加入手続きの際にいくつかの注意点があります。手続きの方法は年金事務所によって多少異なる場合がありますが、基本的には次のような点に注意しましょう。
年金事務所の対応にもよりますが、会社の所在地として登録されている住所に、書類の保管場所を用意するように求められる場合があります。
健康保険と厚生年金保険は年金事務所が窓口となりますが、「会社の所在地に、書類の保管場所が確保されているかどうか」を問われるためです。
会社法では帳簿や資金台帳などの書類を保管することが義務付けられていますが、「会社の所在地」に、それらの書類を保管しておくべきだと言われることがあります。
この場合は、バーチャルオフィスの「キャビネット契約」を利用して対応するのが一つの解決策です。キャビネット契約をすると、バーチャルオフィスの住所に、書類の保管場所を用意してくれます。
ただし、すべてのバーチャルオフィスがキャビネット契約に対応しているわけではありません。年金事務所に確認したうえで、保管場所が会社の所在地でなければならないと言われたら、このキャビネット契約が利用できるかどうかバーチャルオフィスの担当者に確認しましょう。
社会保険に加入するための必要書類として「賃貸契約書」を用意する求められる場合があります。しかし、バーチャルオフィスは部屋を借りるわけではないので、賃貸契約書はありません。
この場合は、バーチャルオフィスの「利用申込書」の控えなどで代用できることほとんどです。ただし、確実ではないので、代用できるかを年金事務所や労働局など、各保険の管轄窓口で確認しましょう。
社会保険に加入する方法は、基本的にバーチャルオフィスの会社であっても同じです。年金事務所やハローワークなどの管轄する窓口に、必要書類を提出することで手続きを行います。
書類を提出する窓口は、会社の業種などによって異なる場合があるので、専門家に相談しましょう。特にバーチャルオフィスの場合は、前述のような注意点もあるため、専門家のアドバイスがあるとスムーズです。
バーチャルオフィスのサービスを提供する会社では、このようなバーチャルオフィス特有の問題についてアドバイスをくれることがあるので、まずは相談してみましょう。