バーチャルオフィスの審査に通るためのポイント

バーチャルオフィスの利用にあたっては、まず審査を受ける必要があります。しっかりした内容のビジネスなのか、利用目的は明確なのか、社長のマナーに問題はないかなど、さまざまな点をチェックされるのです。審査に通過するためのポイントと、審査に落ちた理由の実例を紹介します。

審査に通るために心がけるべき11のポイント

バーチャルオフィスの利用申込をするには、まずは会社の概要が分かるような必要書類を作成し、書類での審査を受けます。多くの場合、書類だけで完結するのではなく面談による審査も必要です。

バーチャルオフィスの審査に通るためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。書類作成の方法と、面談時のコツについて、11のポイントを解説します。

1.提出書類をすべて揃える

バーチャルオフィスの利用審査に必要な書類がそろっていないと、審査を受けること自体ができません。指定された書類をすべて用意しましょう。

必要な書類はバーチャルオフィスごとに異なりますが、申込書や身分証明書などの基本的な書類だけでなく、法人の場合は「法人登記謄本」なども必要な場合があります。

また個人・法人関係なく、事業内容を示すための書類を用意しなければなりません。「事業計画書」や「会社案内」など、どんな会社なのかが分かる資料を用意しましょう。そのような既存の資料がなければ作成する必要があります。

事業内容を知られると審査に不利になると考えて、事業内容を漠然と書くだけでごまかしたり、資料を用意しなかったりという状態で審査を受けることはできません。

2.事業内容を分かりやすく示す

事業内容を示すための資料にどんなことを書くべきかという点は、事業内容によってさまざまです。そのため、分かりやすくなるような工夫が求められます。

図を用いたり、実例を示したりなどの工夫をして、分かりやすくて説得力のある資料にしましょう。例として類似するビジネスを展開する他社サービスを記載すると分かりやすくなります。

資料だけでなく、面談時にも事業内容を分かりやすく説明できるように準備しておくと安心です。自分の会社がどんなビジネスを行っているのか、簡潔に言えるようにしておきましょう。

事業内容はできるだけ具体的に伝える必要もありますので、簡潔で分かりやすく説明しつつ、できるだけ詳しく述べることも重要です。

3.できるだけ事前に記入しておく

申込書などの記入書類に不備があると、審査に落ちる原因になりかねません。

必要な書類には事前に記入しておき、記入漏れがないかどうか、よくチェックしたうえで提出しましょう。

利用開始日など、面談してからでないと決められないような項目があったとしても、事前に決まっていることは書いておいたほうが安心ですし、印象も良くなります。

面談の当日に焦って記入し、不備になってしまうということは避けましょう。

4.会社のWebサイトを作る

会社のWebサイトがない場合は、作っておいたほうが審査に通りやすくなります。

逆に今の時代に会社のWebサイトがない状態では、しっかりした会社ではないという印象になりかねません。

Webサイトがあれば、URLを提示したり、キャプチャ画像を印刷したりするだけで分かりやすく事業内容を示せます。

Webサイトのクオリティや内容に気を配ることも大切です。どんな会社かが分かるように内容を充実させ、Webサイトに力を入れていないという印象にならないようにデザインにもこだわりましょう。

会社のWebサイトを作ることは、バーチャルオフィスの審査のためだけではなく、今後のビジネス拡大のためにも重要なことです。この機会に質の高いWebサイトを作っておきましょう。

5.実績・ポートフォリオを示す

実績やポートフォリオを示して、しっかりしたスキルと経験を持っていることをアピールすることも重要です。

これまでに納品してきた制作物や、これまでに関わったプロジェクト名と自分の担当部分などを具体的に示しましょう。独立する前に、会社員として関わったプロジェクトでも問題ありません。

実績がない分野のビジネスを始める場合、審査に通りにくいとされていますが、どのような準備をしてきたか、どんなスキルを磨いたかなどのアピールをすることで審査に通ることもあります。

現状で可能な限りのアピールをすることが審査に通るコツです。

6.利用目的をはっきり示す

バーチャルオフィスを利用する目的や理由を示すことも重要です。何のために、なぜバーチャルオフィスである必要があるのかをはっきり説明できるようにしておきましょう。

とりあえずバーチャルオフィスを借りて、その後でどんなビジネスにするかを考えるというような、利用目的があいまいな状態では、審査に落ちやすくなってしまいます。

「事業内容を分かりやすく示す」という点とも関係しますが、バーチャルオフィスを利用してどんなビジネスを展開したいのかを具体的に示すことで、利用目的をはっきり示すことになります。

7.面談での話し方は敬語で

審査のための面談では、話し方もチェックされるという点を意識しましょう。バーチャルオフィス側にとって、信用できない人物に利用されることはトラブルの原因になり得ますから、どんな人物かという点も重要な審査項目です。

「こちらはお客だから」と上から目線で話したり、友達感覚のタメ口で話したりせず、取引先と話すような敬語で会話しましょう。

8.メールや電話は丁寧・迅速に

面談だけでなく、メールや電話でも、丁寧で迅速な対応を心がけましょう。

メールの文面や、電話口での話し方に気を付けて、丁寧な印象になるように気を付けることが重要です。

またレスポンスの早さも重要なポイント。メールや電話での連絡がつきにくい人は、さまざまな連絡事項が伝わりにくいという問題もあり、音信不通になるリスクも考えられますから、印象が悪くなってしまいます。

この点についても、お客の感覚ではなくビジネスライクな対応を心がけ、メールの返信はすぐに返し、電話にもすぐに出るか、すぐに折り返すようにしましょう。

9.時間を守る

社会人としてあたりまえではありますが、約束の面談時間に遅刻しないことも基本です。

遅れてしまうと、しっかり仕事ができる人なのかどうかが疑われかねません。バーチャルオフィス側としても、必要な確認などをする時間がなくなってしまうため、適正な審査ができなくなってしまいます。

どうしても遅れてしまう事情が発生したときは、なるべく早く連絡を入れて、印象が悪くならないようにしましょう。

10.勝手な要望は言わない

「個人情報を示したくない」「事業内容を言いたくない」「必要書類が足りないけど審査してほしい」など、ルールを無視した要望を言わないようにすべきです。

この点についても、自分は客だから少しくらい無理な要望を言っても問題ないとは考えるべきではありません。こちらは「審査を受ける側」であり、ルールが守れない人は審査に落ちてしまうという点は忘れないようにしましょう。

11.清潔感のある服装をする

審査のための面談の際は、態度だけでなく服装にも気を配ることがマナーです。汚らしい服装では、ビジネスの質も疑われてしまうでしょう。

スーツにネクタイが無難ですが、それが必須とは限りません。会社のイメージを良くするような、ビジネスパーソンらしい清潔感のある服装で、面談に臨みましょう。

バーチャルオフィスで審査落ちになった事例集

では実際に、どんな理由でバーチャルオフィスの審査に落ちることがあるのでしょうか。実際にあった事例を、いくつか紹介します。

面談での印象が悪かった

面談での話し方や振る舞いが悪くて、担当者に良い印象を持たれず、審査に落ちたという例があります。

印象が悪いといっても、それが理由で審査に落ちるのは極端な場合です。例えば、面談の際に暴言を吐いたり、勝手な要求をしたり、横柄な態度を取ったりなど、あまりにもマナーの悪い言動によって審査に落ちるという事例です。

お客がお店にクレームを言うような感覚で、上から目線で要求してしまうのかもしれません。

しかし審査では、常識的な人物かどうかも見られているという点を意識すべきです。バーチャルオフィス側からすると、このようなモラルの低い利用者によって他の利用者に迷惑がかかるといったトラブルを避けるため、審査に通過させるわけにはいきません。

あまりにもマナーが悪いということが無ければ、この例に当てはまあることはないでしょう。社会人としてあたりまえの、普通の話し方をすれば問題ありません。

事業内容を言わなかった

バーチャルオフィスの利用申込をするには、必ず事業内容を書面で提出し、面談ではそれを口頭で説明する必要があります。

しかし何らかの理由で事業内容を隠そうとして、事業内容を詳しく説明する書類を提出せず、面談で質問されても答えず、結果として審査に落ちるという事例が一定数あるようです。

事業内容を知られると不利だと感じて、隠そうとしてしまうのかもしれません。

事業内容の説明は、具体的である必要があります。例えば、漠然とした表現で「IT系」と書くだけでは不十分です。どのような仕事をしているのか、業務内容を詳しく説明する必要があります。

具体的に説明しない状態では、どんな事業内容なのかが分かりません。どんなビジネスをしているのか分からない会社を審査に通すことはできないのです。

必要な書類を提出しなかった

必要な書類を意図的に提出しないということで、審査に落ちるという事例もあるようです。

ミスで書類が足りなかったり、記入に不備があったりということではありません。その場合は指摘してくれるので、改めて書類を提出したり、修正したりすればよいだけです。

この理由で審査に落ちるのは、指摘されても提出しない、修正しないというケースがほとんどです。この場合も、会社の事業内容を隠したいという理由で、事業内容が分かるような書類を意図的に出さないということが多いでしょう。

書類が不足している状態では当然、審査に落ちることになります。

利用目的があいまいだった

バーチャルオフィスを利用する目的があいまいであるという理由で審査に落ちたという事例もあります。

このケースではバーチャルオフィスを借りて行うビジネスの内容が決定しておらず、とにかく会社設立だけをするために借りようとしたようです。つまり会社を設立してからビジネス内容を決めるというスタンスです。

どんなビジネスを行うのかが分からないということは、どんなリスクのあるビジネスを始めるのかが未知数ということになります。バーチャルオフィスによっては、ルールで禁止している事業内容もありますから、利用目的が決まっていない状態では、当然ですが審査に落ちることになるのです。

厳しい審査は犯罪を防ぐためにも必要

バーチャルオフィスを利用するには、審査を通過する必要があります。審査をすることは犯罪収益移転防止法によって定められているため、審査をせずにバーチャルオフィスを利用させるのは、そもそも違法です。

バーチャルオフィスは比較的安価に住所を借りられるため、犯罪に使用されるリスクが高いサービスでもあります。利用者の中に犯罪者が紛れ込まないよう、徹底した審査をする必要があるのです。

バーチャルオフィスの審査に落ちる原因

バーチャルオフィスの審査に落ちた場合、その理由は通知されないことがほとんどです。とはいえ多くのバーチャルオフィスが、公式サイトやブログなどを通じて、審査に落ちる原因となる要素を解説しています。

バーチャルオフィスの審査に落ちる主な原因を以下にまとめました。

1.事業内容が不安定・実績が無い

事業内容そのものが不安定で、継続的な収益を出せる可能性が低く、すぐに会社が倒産してしまうようなものでは、審査に通過することが難しくなります。

事業内容そのものには問題がないとしても、これまでの経歴とは全く違うジャンルに挑戦する場合など、実績が無いということも審査に不利に働く可能性も。とはいえ実績が無いことを補うために、入念な準備やノウハウの学習をしているなど、アピールポイントがあれば、審査に通過する可能性は十分にあります。

当然ですが、実績が無いのに関わらず、準備が不十分と判断されると、審査に落ちる可能性が高くなります。

2.事業内容がバーチャルオフィス向きではない

事業内容によっては、実体のある事務所が無いバーチャルオフィスには向いていないジャンルがあります。

例えば、受付による来客対応が必須のビジネスや、許認可を取得するために実体のある事務所が必要な業種などです。「部屋」がないとビジネスが成り立たないような事業内容である場合は、バーチャルオフィスではなくレンタルオフィスの利用をすすめられるでしょう。多くのバーチャルオフィスは、レンタルオフィスサービスも併設されています。

どうしてもバーチャルオフィスが必要な場合は、その理由を十分に説明することで審査に通るかもしれません。

3.マイナスイメージが付くリスクがある

クレームが発生しやすいビジネスなど、マイナスイメージが付くリスクが高い事業内容の場合も、審査に落ちるケースがあります。

バーチャルオフィスを利用している会社にクレームが発生し、悪評が広まると、その会社だけでなく「住所」にも悪いイメージが付いてしまうものです。バーチャルオフィスは、多くの利用者が住所を共有するものですから、その住所に対して悪いイメージが付くことは避けなければなりません。

例えば情報商材の販売や、投資コンサルタントなどのように、「儲かる方法を教えます」という事業内容は、結果が出なかったときに大きなクレームになりやすいといえます。場合によっては裁判になることもあり得るでしょう。

ですが、このようなビジネスが必ず審査に落ちるということではありません。どのような事業内容がこの理由に該当するのかはバーチャルオフィスごとに判断が異なります。

4.利用禁止の事業内容である

事業内容によっては、バーチャルオフィスの規定によって明確に「利用禁止」とされているものがあり、それに該当する会社は審査に通過できません。

規定はバーチャルオフィスによって異なる部分もありますが、以下の事業内容は基本的にすべてのバーチャルオフィスにおいて利用禁止です。

  • 反社会的勢力関係
  • 犯罪目的

また、犯罪目的・反社会的勢力関連以外でも、「政治・宗教」関係は禁止というバーチャルオフィスもあります。これもやはり前述の「マイナスイメージが付く」という理由からです。

規定で禁止とされている事業内容については、バーチャルオフィスの公式サイトなどで事前に公開されていることが多いので、確認してみましょう。

必要事項を言わない・あいまい

ここまで審査に不利な事業内容や、禁止されている事業内容について紹介してきましたが、その中に自社が該当するという自覚がある場合に、事業内容を隠したり、あいまいにしてごまかしたりするケースがあります。

しかし、「必要事項を言わない」「あいまいにしてごまかす」という行為そのものが、審査に落ちる原因になるので逆効果です。

例えば、事業内容を証明する資料を用意しないことで、事業内容を隠そうとしたり、面談でもかたくなに事業内容を言わなかったりするとします。その場合、必要な情報が不足してしまうため、当然ながら審査にすら進めません。利用申込み自体ができないことになります。

事業内容を全く言わないというわけではなくても、「IT系」「金融系」などとあいまいな説明でごまかすというのも同じです。

事業内容以外にも、「オフィス移転の理由」について説明する必要がある場合があります。他のレンタルオフィスやバーチャルオフィスから移転してくる場合です。

オフィス移転の理由を隠してしまうと、「トラブルやクレームなどによって移転したのではないか」と疑われかねません。いずれにしても必要な情報を隠すことは、審査に落ちる原因になります。

申込内容に詐称がある

事業内容を隠したり、ごまかしたりする以外にも「嘘をつく」という手段を使うケースがあります。事業内容を偽って申込書類に記入するなどの場合です。もちろんですがこの場合も発覚してしまえば契約は強制的に破棄されてしまいます。

また、バーチャルオフィスを提供している企業もビジネスで事業を展開している為、詐称の内容によっては詐欺罪などに問われ、裁判沙汰になる可能性もあるでしょう。

審査に通過するために嘘をつくことは、何もプラスになりません。バーチャルオフィスの審査に不利とされる事業内容であっても、真っ当な方法でアピールするべきです。

面談や申込時のマナーが悪い

バーチャルオフィスの審査では、対面での面接を実施することが基本です。また申込手続きなどの際にも、バーチャルオフィスの担当者と対面でコミュニケーションする機会があります。

このようなタイミングで「マナーが悪い」という印象を与えてしまい、他の利用者に迷惑がかかる可能性があると判断された場合には、マナーが原因となり、審査に落ちることも。

特別上手なコミュニケーションやマナーが求められるわけではなく、ごく普通のコミュニケーションができていれば問題ありません。自分勝手な要求を言う、罵声を浴びせるなど、ごく普通のマナーに反するような対応をしてしまうと、それが審査に落ちる原因にもなるので注意しましょう。