バーチャルオフィスは多くの事業者と住所を共有するものです。その中に犯罪に関係する業者が紛れていたとしたら?バーチャルオフィスと犯罪の関係や、安全に利用するために役立っている「犯罪収益移転防止法」について解説します。
リーズナブルな価格で気軽に住所を借りられるサービス「バーチャルオフィス」。健全な方だけでなく、犯罪者や詐欺業者にとっても、バーチャルオフィスは「便利な移転先」となります。所在地を変えてトラブルから逃げたり、身分を隠したりするために利用されることもあるようです。
そのためバーチャルオフィスを提供する事業者は、利用者をよく審査し、犯罪に利用されないようにする必要があります。また、利用側も悪影響を受けないように知識を得ておきましょう。
利用者の中に犯罪者が紛れると、バーチャルオフィスを提供する会社だけでなく、そこを利用している事業者全体に、さまざまな悪影響が及びます。犯罪に関係したり、裁判沙汰になったりした会社の所在地はネット上に公表されます。つまりその住所の評判に傷がつくわけです。
バーチャルオフィスは共通の住所を多くの利用者で共有するものですから、その住所の評判に傷がつくと、犯罪と関係のない会社の評判にも悪影響が及びます。
「犯罪収益移転防止法」とはマネーローンダリングを防止するための法律で、バーチャルオフィスに限らず、犯罪に利用されやすい特徴のあるさまざまなサービスが対象です。まずは法律の内容を紹介します。
犯罪収益移転が行われることを防止して、犯罪の拡大や経済への悪影響を抑止するための法律です。「犯罪収益移転」とは、いわゆる資金洗浄(マネーローンダリング)。犯罪行為によって得た収益を、犯罪によって得たお金であると分からないようにすることです。
犯罪収益移転防止法の対象となっているサービスを提供する事業者は、申込者の本人確認などに関する厳密なルールを守り、疑わしい申込者を見つけた場合に届出をする義務などがあります。
「犯罪収益移転防止法」はバーチャルオフィスの利用者にどのような影響があるのでしょうか。
バーチャルオフィスは、住所を変えて身分を隠すために利用できるなどの理由から、「犯罪収益移転防止法」の規制対象です。そのため、本人確認などを実施して、利用者を審査することが義務づけられています。適切な本人確認や審査を実施しないで利用させると違法ということです。
徹底的な審査によって利用者をふるいにかける必要があるため、犯罪に関係する業者が入り込みにくく、健全な会社が安心してバーチャルオフィスを利用すること貢献しています。
犯罪収益移転防止法の対象には、金融機関含まれているため、バーチャルオフィスの利用者に不利に働くケースがあります。
バーチャルオフィスの住所で銀行口座を作る場合に、資金洗浄を疑われ、融資が受けられないということがあるのです。バーチャルオフィスの住所で銀行口座を作る予定がある場合、まずは金融機関に相談し、口座を作れるかどうか確認しましょう。
現在ではバーチャルオフィスを利用する会社も増えていますから、理解のある金融機関を選べば問題なく口座を作れます。
バーチャルオフィスに対して、金融機関が神経質になっている理由を考えると、あらかじめ講じることができる対策がいくつかあります。
バーチャルオフィスを、犯罪目的ではない事業のために利用したいとしっかりと伝えるには、堅実な事業準備を進め、それを金融機関の担当者に示すのも有効な方法のひとつです。たとえば、口座開設審査にクリアするするために、銀行員から「作成したホームページや事業計画書の提示」が効果的だというようなアドバイスを受ける可能性もあります。
そのような場合も、「とりあえず」といった簡略的に作成するのではなく、事業内容に加えて、実際に取り組む予定のある事業計画が分かりやすく相手につたわる書類を作製し、提示する姿勢がとても大切です。
「無駄な手間暇を省きたい」「なるべくすぐにビジネスをスタートしたい」などの理由で、とにかく確実に口座審査をクリアしたい、という場合にぜひおさえておきたい、口座開設のための手順もあります。
それは、まずは実家のように一戸建ての住所で起業する方法です。その住所で設立登記を行います。そうすれば、銀行口座をグッと開設しやすくなります。口座を開設した後、実際に利用するバーチャルオフィスへと登記情報を変更するのです。
バーチャルオフィスを犯罪目的で利用しようとする人間は、どういった手口で契約を結ぼうと画策するのでしょうか。
バーチャルオフィスを不正利用しようとする犯罪に限らず、さまざまな犯罪や悪事を行うための1つのプロセスとして、「無関係な人間を犯罪や悪事に加担させる」という手口があります。場合によっては、加担させられる人間は、自分の行為が犯罪の片棒をかついでいることを自覚しないまま、気軽なお小遣い稼ぎ程度の感覚で、あるいは完全な好意から、協力してしまうこともあります。
投資詐欺などの犯罪目的で犯人がバーチャルオフィスを借りる犯罪においても、無関係な人間を巻き込むこの手口が使われるケースがあるわけです。ひとつの目的としては、無関係な人間の身分証明書類などを利用して、契約にこぎつけること。自分の身分や正体を伏せたまま契約を行い、万が一に備えて足がつきにくいようにしているのです。