バーチャルオフィスの法人口座を開設するには

バーチャルオフィスでも法人口座開設可能

便利なバーチャルオフィスですが、一般的に持たれているイメージは、必ずしも全面的に素晴らしいものではないかもしれません。それは、犯罪目的の不正利用などを耳にした経験があったり、そういったトラブルに巻き込まれることをしっていたりしているからではないでしょうか。

そのため、銀行などの金融機関が、バーチャルオフィスの法人口座開設希望者に対して、かつてよりも慎重な態度をとるようになっているのもごく自然な現象だといえます。

けれども、起業に前向きに取り組もうと頑張っている人々が大勢いるので、バーチャルオフィス法人口座を開設ができないのでは困るもの。実際、「開設が不可能」になったのではなく「開設のハードルが上がった」だけなので、開設自体は可能です。

ただし、銀行などから開設を認めてもらうために、おさえておきたいポイントやコツもいくつかあります。事業に対する姿勢、事業内容を分かりやすく説明する力、充分すぎるほどの書類や証拠資料など、さまざまな準備が必要となります。それらについて、みていきましょう。

バーチャルオフィスで法人口座を開設するメリット

法人口座を開設する際は、会社の電話番号が必要です。銀行により異なるのですが、その電話番号が市外局番から始まる番号(例えば東京であれば03)でなくてはならないと定められている場合があります。市外局番から始まる固定電話のほうが、一般的に信用度が高いので、携帯電話やPHSなどは避けるのが賢明です。

また、バーチャルオフィスを扱う会社によっては、契約プラン内容に市外局番から始まる電話番号のレンタルもサービス内容に含まれている場合があります。これが、バーチャルオフィスで法人口座を開設するひとつめのメリットです。

ふたつめのメリットは、得られる口座名です。例えば、東京などの一等地や人気エリアなど、ブランディングの観点から高い価値をもつ住所のバーチャルオフィスを契約すれば、法人口座名にも付加価値をもたせられます。「〇〇銀行◆◆支店」。◆の部分に、東京や地方における一等地の名前が入れられるわけです。

バーチャルオフィスの法人口座開設はなぜ難しいと言われている?

法人の場合であれ個人の場合であれ、バーチャルオフィスの法人口座を開設するのが比較的困難です。口座開設に至るまでには、銀行などの金融機関が定める厳しい審査をクリアしなくてはなりません。法人口座開設が、現状のように困難になってしまった経緯を3つに分けて解説します。

  • 1.ネットシステムの悪用
    インターネットが一般家庭にもしっかり普及し、身近な存在として利用されるようになり、ネット専門の銀行、いわゆるネット銀行(例:ソニー銀行、楽天銀行…)が登場しました。銀行とネットのつながりはネット銀行だけににとどまらず、だれもが知るメガバンク(例:三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行)も、ネットバンキングという形でネットの導入を開始。その結果、銀行窓口を介さない口座開設が可能になりました。送金その他の操作がきわめて手軽に行えるようになったため、不正利用などといった犯罪の温床となってしまった感は否めません。
  • 2.口座取扱い厳格化の要求
    増加する犯罪をとりしまるため、銀行口座を取り扱う際に、もっと厳格な管理が求められるようになりました。ついには、警察庁や金融庁からも要求が出されるに至ったわけです。ただし、こういった厳格化の波は、日本国内のみの現象ではありませんでした。テロリストへの資金提供やマネーロンダリングなどをさらに厳しく取り締まるのが、世界規模で広まっています。
  • 3.犯罪収益移転防止法改正
    「犯罪収益移転防止法」という法律の改正が行われました。その結果、銀行をはじめとする金融機関は、口座開設の際にかつてよりも複雑な手続きを顧客に求めざるをえなくなったわけです。本人確認のできる資料の提出が徹底して求められるので、他人になりすまして口座を開設したり、あるいは口座を売買するといった操作は、ほぼ不可能になりました。

法人口座開設のために必要なこと

法人口座の開設を銀行側に認めてもらうためには、実際に事業をスタートする意志があり、その具体的な内容やビジョン、資本金の準備なども整えている点などを知ってもらうことが、非常に重要です。

事業目的をはっきりさせる

  • 1.わかりやすい事業内容
    どのような業務を行っているのか、どのようなサービスを提供しているのか、あるいは主力となる製品は何なのか…などの問に対して、誰がきいても理解しやすく、かつ簡潔に説明できる必要があります。
  • 2.代表者の経歴
    法人口座の開設を希望している法人の代表者が、どういった人物であるかを明確にし、信頼できる企業であることを銀行側にアピールできます。代表者の詳細な職務経歴を説明できるようにしておきましょう。
  • 3.証拠となる書類
    すでにビジネスをスタートして一定の時間が経っている場合であれば、取引などで使用した書類がたまっているはずです。実際に使用した請求書や受注書、納品書、領収書などを用いながらの説明であれば信憑性が高まりますし、事業実態があることの証明にもなります。

資本金の金額を低すぎる金額にしない

法律上では、会社を立ち上げる際の資本金は1円でも問題ありません。けれども、ただでさえ法人口座開設のハードルが高いとされているバーチャルオフィスです。資本金を下限である1円に設定してしまうようでは、銀行側によいイメージを与えるのは難しいでしょう。

バーチャルオフィスの法人口座開設と各金融機関の特徴

法人口座開設にあたっては、どの金融機関を利用する場合でも、それぞれの金融機関に独自の特徴、かつメリットとデメリットがあることを理解しておきましょう。特徴・メリット・デメリットを整理するために、金融機関を4つのタイプに分け、ひとつずつ説明していきます。

都市銀行

「バーチャルオフィスだから…」という理由で法人口座の開設を拒否することはありません。ただし、新たに法人を設立した場合、つまり取り引き実績がない状態では、かなり困難な傾向にあるようです。

三井住友銀行の場合

法人口座開設は不可能ではありません。ただ、取り引き実績がゼロ、というのはやはり銀行側としては、大きな不安要素であると捉えるようです。そのような場合でも、焦ってすぐに口座を開設しようせず、一定量の取り引きをこなしてから相談するほうが、スムーズにいく可能性はグッとアップするでしょう。

みずほ銀行の場合

かつては、法人口座を開設したい人には九段支店を紹介するシステムになっていました。ただ、近頃では、一定以上の大きさがある法人以外では、口座の開設が難しくなっています。

  • 都市銀行のメリット
    請求書などの書類に都市銀行の情報が記載されているだけで、顧客からの信頼度がアップさせる効果があります。
  • 都市銀行のデメリット
    利用者からの振込手数料をはじめとして、いくつかの料金が、他の金融機関よりも割高といえる傾向があります。

地方銀行・信用金庫

都市銀行と比較すると、バーチャルオフィスの法人口座を開設できる可能性はやや高めだといえます。そのため、「どうしても口座を開設したい!」という場合は、始めから、都市銀行と地方銀行の両方で開設を試みるとよいでしょう。

また、信用金庫では、バーチャルオフィスの法人口座を開設ができる可能性は、かなり低いようです。リスクが高い場合もあるバーチャルオフィスの法人や個人をサポートする環境は、あまり整っていないといえます。ただ、これは他の金融機関でも同様ですが、融資がとおった場合には、おのずと口座の開設が可能になる、という点をおさえておいてください。つまり、「融資が通る」=「口座の開設が可能」というわけです。

  • 地方銀行・信用金庫のメリット
    地域密着型のサービスを謳っているところが多いです。そのため、融資の相談に対応してくれるなど、利用の仕方によっては心強い存在です。
  • 地方銀行・信用金庫のデメリット
    メガバンクや都市銀行と比較して、利便性の面では劣っていることは否めません。ただ、地域密着型の事業を展開していく場合は、逆に規模の小ささがメリットになりえます。

ネット銀行

ネット銀行の場合、バーチャルオフィスを利用しているとわかった時点で法人口座の開設を断ってくる銀行と、バーチャルオフィスを利用しているかどうかを審査対象にはしていない銀行とがあります。後者の銀行であれば、提出した書類の内容や事業に関する説明の仕方次第では、口座開設の審査をクリアすることができます。

GMOあおぞらネット銀行の場合

バーチャルオフィスであるかどうかは審査基準には含まれません。ネット銀行業務の対応をスタートさせてからまだそれほど時がたっていないため、現在は口座数を少しでも増加させようとしている時期であると考えられます。

ネット銀行のなかでは、GMOあおぞらネット銀行の他に、楽天銀行やジャパンネット銀行で、バーチャルオフィスの法人口座開設が可能です。

  • ネット銀行のメリット
    「ネット銀行」という名称どおり、ネット上での操作がしやすいのが最大のメリットです。振込手数料の安さや時間帯を気にせず利用できる便利さも、ネット銀行がもつ、他にはない大きな魅力です。
  • ネット銀行のデメリット
    実際の店舗としての支店が存在しないため、サポート面はやや手薄です。問題が発生したときはコールセンターを利用します。

ゆうちょ銀行

バーチャルオフィスの法人口座であっても、開設を認めてもらえる可能性はあります。ただ、その場合の最低条件として、郵便物の受け取り場所が登記先の住所と一致している必要があります。

  • ゆうちょ銀行のメリット
    もともと国営企業だったため、日本全国のネットワークが密になっているのが一番のメリットです。支店数が多く、ATMも充分な台数が設置されています。また、さまざまな手数料が無料なのも嬉しいポイントです。
  • ゆうちょ銀行のデメリット
    預入限度額が低いというデメリットがあります。設定額は1,300万円なので、事業が急激に成長した場合などは、あっというまに限度額をオーバーしてしまう可能性も。しかし、メリットが多いゆうちょ銀行ですから、利用をつづけながら他の金融機関にも口座を開設し、併用するといった工夫をして使い続けたいものです。

法人口座開設で銀行訪問をする際の注意点

なんとか不正や犯罪目的での法人口座開設を防ぎたい銀行側の立場を理解し、充分な準備をしてから申し込みをすることが、口座開設を実現するためのカギとなります。充分すぎると感じるほどの準備をしておきましょう。

事業実態が説明できる、資料や商品サンプルを用意しておく

最も重要なのは、担当者に対して事業内容をくわしく伝えるための資料や書類の用意です。まだ事業をスタートしていない場合、あるいはスタートして間もない場合などは難しいかもしれませんが、会社案内用パンフレットや主力商品のサンプルなどに加えて、「実際に取り引きなどを行っている証拠となる書類」を提示できれば、さらに説得力が増します。また、事業内容を具体的に説明するのにも役立つでしょう。

「実際に取り引きなどを行っていることを証拠できる書類」とは、たとえば、見積書・請求書・契約書・領収書・受注書・納品書などです。

自己経歴書など説明に必要な書類を本人確認書類と併せて用意

事業の代表者あるいはこれから事業を立ち上げようとしている人の経歴を、詳細にまとめておくことが大切です。

その際、留意しておきたいのが、法人口座の開設を希望しているその事業の内容に、経歴がどのようにリンクしているのかが明確にわかるようにまとめるのが得策だということ。 銀行などの担当者が「なるほど…この人はこういった流れで、これまでのこういった経験や人脈を生かして今回、この事業をたちあげようとしているんだな」というように、不自然さや唐突さを感じずに納得できるようにするのが狙いです。

また、会社登記簿謄本・定款・代表印・銀行印、会社印鑑証明書など、本人確認ができる書類を、必要なときにあわせて提示できるように、きちんと整理しておきましょう。

事業計画書や会社概要を用意しておく

これから事業をスタートさせるなら将来的な見通しについて、冷静に説明できるように練習することをおすすめします。説明しているうちに、熱がこもり脱線してしまわないように注意が必要なためです。銀行の担当者が知りたい内容、つまり「事業がどのようなプロセスを経て成長していくのかを、根拠ある堅実な数値に基づいて伝える」ができるように練習の必要があるのです。

バーチャルオフィスとの契約書を用意しておく

銀行のような「固い」組織からすると、バーチャルオフィスに対するイメージはあまりよくない可能性は高いかもしれません。だからといってバーチャルオフィスを利用している場合は、その事実をふせないようにしましょう。 法人口座開設においては、なにより信頼関係が大切です。後から、バーチャルオフィスであることが分かってしまうという、伝わり方はマイナスポイントとなります。バーチャルオフィスの契約実態が明確にわかる書類を用紙しておきましょう。

また、ひとつ注意しておきたいのが、犯罪歴がある拠点住所はどうしても不利になります。犯罪歴の有無を確認してからバーチャルオフィスと契約することが大切です。

ホームページを作成しておく

法人口座開設を希望する場合、その事業のホームページを制作しておくことが大切です。事業内容に関する資料や書類を補足する意味でも、あるいは銀行などの担当者からの信頼を高める意味でも、充実したホームページやウェブサイトは必要不可欠です。もちろん、実際に事業を軌道にのせるためのビジネスツールとしても有効なので、審査後も決して無駄にはなりません。

法人口座開設のために必要なもの

法人口座を開設するため提出が必要となる書類や資料は、ほとんど共通しています。一部異なる部分もあるので、複数の銀行を訪問する際は、注意が必要です。また、新規の法人が特に提出を求められる可能性が高い書類もあります。

ここでは、必要な書類をカテゴリー別にみていきましょう。あわせて、「必須ではないが自主的に用意することをおすすめする書類」についても紹介しています。

ほぼすべての銀行で提出を求められる書類

  • 履歴事項全部証明書(例:免許証 パスポート)
  • 来店した人の身分証明書
  • 来店者と法人との関係を証明する書類

上記3つはほぼ確実に提出を求められます。

銀行によって提出を求められる書類

  • 法人の印鑑証明書
  • 法人番号が確認できる書類(例:法人番号通知書)
  • 主要な株主の名簿(あるいは主要な出資者の名簿)

この3つの書類はケースバイケースで提出を求められることがあります。

新設法人がよく提出を求められる書類

  • 所轄税務署あての法人設立届出書控
  • 所轄税務署あての青色申告承認申請書控
  • 主な事務所の建物登記簿謄本(あるいは主な事務所の賃貸借契約書)
  • 定款の写し
  • 実質的支配者(=一定割合以上の株を持っている人あるいは事実上の経営権をもっている人)に関する説明書類

自主的に用意したほうが良い書類

このカテゴリーに属する書類は、ある意味では無限に考えられます。というのも、「口座を犯罪目的で得ようとしているのではなく、きちんとした実態のある事業運営のために口座が必要」という思いをアピールするための書類だといえるからです。一例としては、実際に取り引きなどに使用した書類や、扱っている製品のパンフレットなどがあげられます。

参照元:ナレッジソサエティ(https://www.k-society.com/virtual_office/corporate_acount/)

書類以外のあった方が望ましいもの

書類や資料以外で、あったほうが口座開設に有利なものもあります。

銀行の人とのパイプ

法人口座開設をしたい銀行に、関係者がいる場合、それはぜひとも活用すべき「人脈」だといえます。内部から推薦の声があがれば、口座取得には、かなり有利になるからです。

SNSのアカウント

普段から利用しているSNSアカウントがある人は、それを提示するとプラスに働く可能性があります。というのも、例えばある人が犯罪や悪事を企てている場合、他人と長期にわたる関わりを持とうという気持ちにはならないはずだからです。ですので、本名が必要となるフェイスブックが、特に有利かもしれません。